男が差し出した札束をふんだくると、明らかに厚みが足りない。
8万THBは、1,000THB札で80枚だ。男が俺に渡したのは、わずか20枚ほどでしかない。
このような状態でも、まだ奴は俺から金を盗もうとしているのだ。
俺は男の意図を読み取った直後、地面に横たわっている男の胸ぐらを再度掴み、そのまま喉元へ拳を押し付けた。
殴るまではいかないか、これは効果的である。
男は苦しそうにしながら、再度ポケットから札束を出して来た。もちろん、さっきよりも明らかに多い。

俺はそれを受取ると、黙って立ち上がり男に軽蔑の眼差しを向けたまま、無言でその場を立ち去った。
覚醒したとは言え、薬の効果が残っており、実は歩くのもままならない状態だったからだ。
そのまま殴り合いに発展していたならば、俺は奴の丸太のような腕から繰り出される重いパンチに打ちのめされていただろう。
それほどの巨漢だったのだ。


しかし、この時に俺は大きなミスに気付いていなかった。