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2011年06月

俺はその言葉に衝撃を受けた。
タイという国にきれいな川があるようなイメージを、俺が持ち合わせていなかったからだ。

つまり、俺の中では「なんかすごい汚いものを食べさせられた」という感覚だった。
しかし、食べてしまったものはしょうがない。
覚悟を決めて、今度は自ら敢えて「チリの草巻き」にチャレンジした。
俺のその姿を見て、二人も同じようにしてチリを川で採って来たというその草で巻き、口の中に放り込んだ。

残念な事に、辛さに勝てずにのたうち回ったのは俺だけだった。
彼女達は平気な顔をして、その後もむしゃむしゃとまるでキュウリのぬか漬けを食べるかのように食べ続けている。

ここで俺はタイ人の辛さへの耐性がずば抜けて高い事を学んだ。
これは今でも俺がタイ人と共に過ごす際に教訓として生かされている。

彼女達は、辛いチリを食べて、唐揚げを食らう。
口が油っぽくなったと感じたらソムタムを食べる。



そんなローテーションだった。


俺もチリの量を減らし、そのローテーションに加わった。

俺は慌てて置いてあった水をがぶ飲みした。
喉が焼けるように痛い。

水を全て飲み干した所で、ようやく落ち着いた。
驚きを隠せないまま、俺はアンに「何を食べさせたんだ?」と尋ねたが、アンは俺のそんな様子を見てケタケタと笑っていた。
そしてアンが指差した先には、何やら細々した黒い物体が見えた。
一見すると佃煮のようだったが、よく見ると何だか赤っぽくもある。

次の瞬間に俺は気がついた。

「チリ」か。

チリと言っても、あの細長い国ではないし、積もれば山となるアレでもないし、もちろん坂下チリ子でもない。
チリペッパーのチリだ。
辛いものが平気な方だと自認していた俺は、こんなに辛いチリがあるのかと驚かされた。
どれぐらい辛いのかと説明をすると、においを嗅いだだけで鼻の奥で辛いと感じられ、食すと途端に脳天から何かが放出されたようなまるで漫画のような感覚を覚え、口の中に残る辛さに思わず地団駄を踏みたくなる程だ。

そんなチリを変な青臭い草で巻いて食べる、何とも特殊な一皿だ。
日本でも見かける食材に例えると、特別に辛いワサビを細長いネギに詰めて、それを丸めて口の中に放り込むという、極めて暴力的な食べ物だ。

驚きはまだ続く。
アンはさらにケタケタと笑いながら、「この草は裏の川から採って来たんだよ」と言い放った。


 

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