アーカイブ

2012年03月

カテゴリ:

「さぁ、どうする?」

と、奴は俺に向かって悪戯っぽいはにかみを見せながら言い放つ。
これが本物の女性からの一言であれば、俺は理性をかなぐり捨てて虎へと変身する事だろう。

しかし、

奴は女性ではない。



俺は吹っ飛びそうな何かを必死に保ちつつ、奴との会話に細心の注意を払った。

「俺は飲み過ぎて疲れたから寝かせてもらうよ。」

奴の表情が変化する。
驚いた表情と落胆した表情を交互に見せる奴の心理状態は相当複雑なものへと変化している事だろう。
そこに俺は追い打ちをかける。

「ここにいてもいいけど、俺はその気はないからよろしくね。」

「その気がない」とは、あなたとは行為に及ぶつもりがないという事を示している。
無理に追い返す事はしないけど、ここにいても何も起きないよという事だ。
ここで奴の目的が何かを試す事が出来る。

金か、スパンか。

いずれにしろ、俺は何かしらの代償を覚悟しなければならない状況だが、奴は何かを悟ったらしい。
俺が知らずに奴を連れ帰り、トラブルとなった場合には罵られながら追い返される事も起こりえた状況において、俺はそれをする事は無く、男としての奴の存在を許し、かつ自らのミスを認めて代償を覚悟しているというところまでをおそらく理解していた。

どうやら、俺は奴との心理戦に勝利したようだ。
奴は自分の性欲を抑え、俺が暗に提示したディールに応じたのだ。

こうして俺は奴に支払うべき代償を支払い、極めて静かに奴との肉体的接触を避ける事に成功した。





2012年累計スパン: 65 (2012/3/27)
200スパンまで、あと135スパン

カテゴリ:

しかし、俺は全く動揺する素振りを見せる事なく、奴と正面から対峙した。
バスタオル一枚を伊達巻きのように体に巻き付けた「何か」は確実にそこにいるのだが、今の俺の意識の中では女性としての扱いである。

通常の流れであれば、俺もここでシャワーを浴びるべきだ。
女性が先にシャワーを浴びれば、男もシャワーを浴びる。至って普通で自然な流れに従い、俺も笑顔を携えてシャワーを浴びる為にシャワールームへ移動した。

シャワーを浴びながら、俺は色々とシミュレーションを行う。

「奴がドアの外にマッパ(真っ裸)で待っていたら?」

「奴がどこかに潜んでいて、俺が戻った瞬間に羽交い締めにしてきたら?」

「実は奴がスタンガンを持っていて、俺を失神させたら?」

などと、現実味の低い事まで考えながら静かにシャワーを浴びる。
いろんな状況をイメージしておけば、それなりの対応が取れるので、これは言うなれば最低限の備えと言えるだろう。

覚悟を決めて、シャワールームのドアを開けると、幸いにもそこに奴はいない。
少し安心しつつも、背後の気配などを確認しながらベッドルームに戻る。

この時の俺の動きは、ゴルゴ13さながらだったろう。

「俺の背後に立つな」

思わずそう呟いてしまうところだが、今はそれどころではない。


なぜか薄暗いベッドルームで、奴は静かにベッドに腰掛けていた。
想定していたような危険は無いものと思われるので、まずは第一警戒態勢を解いた。
しかし、依然として非常戦闘態勢は維持したままである。

俺は静かにベッドに近づき、奴に呼びかける。
奴は、すっかり女の顔になっていた。

一瞬ドキッとし、その直後に後悔する。
なぜなら、奴には立派なものがついているので、顔を見て妄想してしまったような出来事は起こりえないからだ。

ここからがいよいよ正念場だ。
34歳の誕生日を目前とした俺に大きな試練が訪れる。






2012年累計スパン: 65 (2012/3/27)
200スパンまで、あと135スパン

このページのトップヘ

見出し画像
×