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2012年09月


自動券売機と対面した俺は、タイの自動券売機の操作を思い出しながら漢字で表示されている路線図上の目的の駅を「ポチっと」タッチした。
頭の中では波波の乳首を「ポチっと」したいという欲求でいっぱいだった為に、この時点で早くも息子は少し元気になっていた。

 「ポチっとな」

この言葉を脳内再生しながら、俺はくしゃくしゃの1元札を投入して乗車券を購入した。
深圳の地下鉄は現在も拡張中だが、その当時はまだ延伸工事真っ最中だった。
その為、目的地の南山へもっとも近くて分かりやすい駅まで地下鉄で行き、そこからタクシーに乗るという計画を立てていたが、当然俺は中国語が出来ないので目的地を紙に書いてタクシーの運転手に見せるというつもりでいた。
目指した地下鉄の駅は「世界之窗」という、日本語に訳すと「世界の窓」という何とも誇大妄想甚だしい駅だ。
そして、この駅の目の前には「世界之窗」という世界各国の特徴をミニチュア化したテーマパークが存在しているが、よっぽどの事情が無い限り来園をお勧めしない。
というのも、

 くそつまらん

からだ。
端から端までどこをとっても中国クオリティなテーマパークは、楽しむ要素はさほど無いのだが、なぜだか無邪気にはしゃいでいる中国人民達に混じって広大な敷地を歩き続けなければならない。
かわいい小姐でもいれば話は別だが、大半は田舎から出てきたようなじーさんばーさんだ。
その中で、敢えてオススメスポットとして挙げるとすれば、

 ニセモノ富士

かも知れない。
見た瞬間に「お前ら、日本に行った事ないだろ!!」と、心の奥底からツッコミたくなるシロモノなだけに、日本人の失笑を買う確率はほぼ100%だろう。
著作権の概念の無い国は世界中が知っているが、エッフェル塔のコピーを作ってしまって名物にしているあたりも、理解し難い。

話がどうでも良い方向に逸れたが、このテーマパークの近くにあるタクシー乗り場から、俺はタクシーに乗り込んで波波の待つ場所へと向かった。


地上から2回エスカレーターを降りると、そこは良くある無機質な地下鉄の駅となっている。
大きな柱を取り巻くように自動券売機が設置されているが、なぜか中国人は窓口で切符を買いたがる傾向にあるというのが子の時点で伺えた。
自動券売機であればさほど列が出来てないのだが、窓口には長蛇の列が出来ており、なんだかその列に並んでいる人々は殺気だって見える。

俺はとりあえず券売機へと向かい、どうやって乗車券を購入すれば良いかを確認してみたところ、日本ではあまり見ない「行き先を先に指定する」タイプの券売機だった。
タイによく足を運ばれる諸兄方には御馴染みであろう、あれだが、変な所までタイのそれと酷似しており、大きな紙幣は受け付けられない仕様になっている。

まったくもってむかつくぜ!ずっぽし!

と心の中で呟きながらも、イミグレーションを超えたばかりで100元札しかもっていない俺にはそこで乗車券を買えないという事を理解した。
そこで俺は100元札を崩そうと近くに見えたコンビニ(のような商店)へと向かい、どうでもいいまずそうなお菓子でも買って券売機で利用出来る小額紙幣を獲得しようとした。

3元程のどうでもいいお菓子を買うのに100元札を使うのは嫌がられるのではないかと思ったが、そんな事を言っている場合ではないので、決死の気合いでレジへと向かった。
レジで俺を待ち構えていたのは、いかにもやる気のない気だるいオーラを禍々しく放つおねーちゃんだった。
中国ならではなのかも知れないが、基本的にすっぴんの彼女達は若いのかも知れないが年齢不詳でかわいくも何ともない上に、サービス精神という言葉の存在自体を知らないと思わせる程に無愛想な対応で終始する。
いよいよ俺の順番がやってきた。
俺が3元のお菓子を買おうと100元札を出した瞬間に一重まぶたの細い目をぴくりとも動かす事無く何かを言い放ちながら100元札を突き返してきた。

拒否、拒否された!?

と俺は想定以上の無愛想な対応に俺の意識の指揮系統は乱された。

3元なんだから3元出せよと言わんばかりに睨みつけながら言葉が話せない俺に対して捲し立てて来る奴の言い分は理解は出来るが、俺にも引き下がれない理由がある。

ここでプチ中日戦争勃発である。

言葉の話せない俺は、突き返された100元札をそのまま押し返して激しく首を横に振った。
勢いで首が360度回転するのではないかと思える程に激しく振り回した為か、奴の口元がヒクヒクと釣り上がり、今度は向こうが混乱しているようにも見て取れた。
ここが勝機だと俺は一気に畳み掛けるように、さらに強く100元札を突き返した。

明らかに奴の表情が変化した。
無表情だった能面に明らかな動揺が走ったのを俺は見逃さなかった。
その瞬間に俺の勝利が確定し、その後は平和的な講話へと移行するのが平和的解決への正しいプロセスだと確信した俺は、満面の作り笑顔で和平を持ちかけた。
俺こうして無事に小銭をゲットし、自動券売機へと軽やかに足を向けた。





2012年累計スパン: 196 (2012/9/2)
3年連続200スパン達成まで、あと4スパン



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