俺があまりにもおいしそうにそのマンゴーを食べていると感じたのか、アンとアンのお姉さんはどんどんとマンゴーを勧めてくる。
その一方で、アンは俺がチリを食べてその辛さに驚く姿も楽しんでいるようで、マンゴーとチリを交互に勧めてくる。
辛いチリを食べて、その辛さをマンゴーで緩和するという具合だ。

そのやりとりを散々繰り返したあと、俺とアンはもう一眠りした。
何とも幸せな瞬間だった。

その当時の俺は、ITのエンジニアとして長時間労働が当たり前の会社に勤め、完全にワーカホリック状態だった。
その時の習慣からか、長時間労働をする事は今でもあまり苦痛には感じてはいないが、その当時は常にストレスと闘っていた。
仕事では常に神経をすり減らし、土曜日も日曜日も祝日さえも関係ないような生活な上に、長期の休暇でも毎日電話が鳴るような生活だった。
それでも、当時の俺はそれが当たり前であり、また何の取り柄も無い俺を雇ってくれた会社への恩返しのつもりで働き続けていた。

しかし、やはりすり減っていたのだろう。


仕事のストレスは実生活へと影響し始め、仕事が中心の生活が災いして友人との交流が激減した。
そして入社間もない頃に付き合っていた彼女とも、つまらないいざこざで別れる事になった。
仕事のせいにしているだけと言われると、確かにそうかも知れない。
しかし、ストレスはバランスを狂わせるという事は、バランスが狂っている時には気付かないものだと思う。

そして、マンゴーを食べて楽しく食卓を囲っている時に、それに気がついた。
仕事は大事だが、ストレスを溜め込んではいけない。
ストレスは常に発散し、人生そのものが楽しいものだと考えられるようにならなくてはならないと思うようになった。