O氏は日本人だ。
しかし、流ちょうな英語を操り、その仕草はまるでアメリカ人である。
さらに香港の神様の知り合いで、マイタン日記でも有名な「クリス」と「ジョン」の二人とも仲が良く、普段からよく一緒に行動して飲み歩いていた。

そこにいきなり英語を話せない俺が加わったのである。
香港の六本木的夜の街であるランカイフォンで夜な夜な集まり、普通であれば仕事の事なども話しながら酒を酌み交わすのであろうが、英語が話せない俺はどこか蚊帳の外に自分を置きながら、O氏らとただ酒を飲んでいた。

そして、酒がある程度進むと、決まってワンチャイに移動する。
それがO氏のお決まりのコースだった。

ランカイフォンからタクシーに乗り、ワンチャイへ移動する。
わずか10分ほどの乗車時間だが、慣れるまではその時間でさえ長く感じる程に、緊張していたのだ。
記念すべき初めてのワンチャイでは、文字通りワンチャイデビューと言えるような内容で、O氏ひいきのフィリピン人バンドが演奏するバーでビールを飲んだ後、前述の半地下のバーへと突入した。

O氏はすでに顔なじみとなっており、もはや入場料は不要だった。
笑顔で屈強なガードマンたちと言葉を交わしながら、半地下へと俺を案内する。
今思えば、O氏がいなければ絶対に入っていかなかっただろうと思えるような場所だ。

25段ほどの短い階段を下り、そこで俺は、それまでの短い人生の中で味わった事のないような空気を味わったのだった。


つづく


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