ソフィーからの返信
話を元に戻そう。会社に到着する直前に受け取った、ソフィーからのSMSは悲しい知らせだった。
「実は、明後日にはフィリピンに帰るの。だから、これが最後になっちゃうね。あなたとはまた会いたかったけど、ごめんね。」
ついさっき感じたばかりの安心が、一気に吹き飛んだ。
人との繋がりを感じる事が出来た直後に、その繋がりを一気に摘み取られ、途端に不安な気持ちが俺の心を支配し始めた。
誰かに支えられていたという安心感が俺の不安を幾分和らげてくれていたのだが、俺の頭が再び遅刻している現状を理解し、会社に到着した後に起こるであろうシチュエーションについてシミュレートし始めた。
俺が想定したシチュエーションはこうだ。
「扉を開けて挨拶をするが、皆が怒りを伴った視線を向けて無言のまま俺を見た後、ボスからのキツイ一言。」
このシチュエーションに対して、俺が出来る事は謝罪と反省以外には無い。
実際に扉を開ける直前まで、どのような言葉で謝罪をすればいいのかと頭を悩ませていた。もちろん、ソフィーとはもう会えないという悲しみに支配されたまま。
そうして、ついに会社の扉を開ける。
その瞬間、
「ずっぽし!ずっぽしして遅刻した人が出社してきたぞ!」
と、どこか楽しそうなボスの声が聞こえた。
しかし、その声はどこか厳しい口調でもあり、やはり怒りを伴っているのだと感じられる。
俺は先手を打たれた格好となり、その言葉にただ「遅刻してすいません!」と簡単な謝罪しか出来なかった。
この後がボスなりの戒め方なのだろうか。
ここから一日に渡って昨晩の出来事について詳しく報告することになり、また、それが社内で共有される事となる。
ソフィーとはもう会えないと分かっている俺にとっては、それはかなり辛いペナルティーだった。