シンプルすぎるセキュリティ
挙動不審な俺を横目で見ながら、俺が近寄ってくるのを待ち構えていたカウンターの奥のにーちゃん。話しかけなければ、本日の宿がないという背水の陣に置かれている俺は、待ったなしでにーちゃんに話しかけた。
最初は怪訝そうな顔をしていたにーちゃんは、意外といい奴だった。
話しかければ、「部屋は空いてる、800バーツ」だとハキハキと答えてくれた。
決して優しそうではないその顔にも、800バーツ支払った後には笑顔が浮かび、俺に体を休める場所を提供してくれた。
テンションは高いにも関わらず疲れていた俺は、とりあえず部屋に入って部屋を見渡す。
一応、最低限の防犯知識として、セーフティーボックスを使った方がいいという事だけは覚えていた。
しかし、この時は野生の勘が働いたのか、セーフティーボックスを使わないようにしようと決め、金目のものは常に持ち歩くようにした。
というのも、ドアの鍵が南京錠一つだったからだ。
部屋に入るときには外側にある南京錠を外して中に入る。
部屋の中にいる時にはその南京錠を内側からかけるというシステムだ。
つまり、外出する時に誰かが合鍵を持っていれば、もしくは鍵を簡単に開けられるような奴がいれば、すぐに部屋に入れてしまう。
さすがの俺も、これには警戒心を抱いた。
この後外出することになったのだが、その時も金目のものは身に着けて外出した。